農村のフツーの風景、それは二次的自然、代償自然などと言われる人間と自然の共生の姿です。丹誠込めて手を入れ続けてきた、農耕景観であり、真の意味での文化的景観です。雑木林や水田・畑が伸びやかに展開し、ため池や水路が潤いの水辺を提供しています。
「春の小川」、「ドジョコ、フナッコ」、「ふるさと」などを口ずさみながら、そぞろ歩く休日。大都会から訪れた親子連れにとって、まさに至福の時です。ところが田舎の人にとっては、なんと言うこともないただの場所、ただの時間。これが、地域活性化につながるなどとは、思いもよらないかもしれません。そこに、グリーンツーリズムの落とし穴があります。うちのムラには、あれもない、これもない、なーんにもない。そしてないものねだりの地域開発が、そもそもあった農村の魅力をそこなってきました。
トンボの大群が夕日に染まりながら、田の畦にたたずむ親子を包むようにして、山の方にゆっくりと移動してゆきます。ただこれだけの場所と時間の体験ではありますが、都会に戻った子どもは、「いなかにはなーんにもなかった」とは決して言いません。
グリーンツーリズムは、農村の人でさえ忘れがちな「農村感動」を、人々のなかによみがえらせる旅でなければならないのです。
関東ツーリズム大学協議会委員
東京農工大学教授
財団法人日本グラウンドワーク協会 理事
棚田学会 理事
日本景観学会 副会長